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仙台高等裁判所 昭和25年(ネ)200号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取消す。別紙目録記載の山林(現況農地)について被控訴人が昭和二十四年一月二十九日、昭和二十三年七月二日附買収令書を交付してした買収処分の無効であることを確認する、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は主文第一項同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、控訴代理人において、「本件農地はその附近の土地と共に昭和十年八月二十一日第十一都市計画宮城地方委員会の決議により塩釜市都市計画区域に編入され、昭和二十二年四月十日塩釜市都市計画に基き土地区画整理が施行される土地であるから自作農創設特別措置法第五条第一項第四号に該当するものであつて、買収することができない土地である。尤も本件農地については同条項の県知事の指定を受けたものではないが、右指定がなくても右条項の解釈上当然買収計画から除外さるべきものである。この点からしても本件買収処分は無効を免れないものである。なお本件買収令書に記載された買収の時期は昭和二十三年七月二日である。」と述べ、被控訴代理人において「本件買収計画につき異議却下決定に対する訴願は法定期間経過後にされたものであるが、宥恕すべき事情あるものと認めて実質について裁決されたものである。本件農地が控訴人主張の都市計画による土地区画整理を施行する土地であることは否認する。右農地が買収することができない土地であるという控訴人の主張は争う。なお本件買収令書に記載された買収の時期の点は争わない。」と述べた外、原判決事実摘示と同一であるからここにこれを引用する。

(立証省略)

理由

別紙目録記載の山林(現況農地)につき、買収の時期を昭和二十三年七月二日とする同日附本件買収令書が昭和二十四年一月二十九日被控訴人から控訴人に交付されたことは当事者間に争がない。控訴人は、右買収令書は本件訴願裁決前である昭和二十三年七月二日発行された違法なものであるから、右買収令書の交付による本件買収処分は無効であると主張し、本件訴願裁決の日が昭和二十三年十一月十一日であり該裁決書が遅くも同月二十日に控訴人に送付されたものであることは被控訴人の争わないところである。しかし買収処分の効力は買収令書の作成日附の如何に拘らず該買収令書が現実に被買収者に交付されたときに生ずるものであるから、本件において買収処分の効力は買収令書が控訴人に交付された昭和二十四年一月二十九日に生じたものというべきであつて、該買収令書の作成日附が訴願裁決前である昭和二十三年七月二日であつてもこのことは買収処分の効力に影響を及ぼすものではない。又本件買収計画の定められた日が昭和二十三年五月二十一日であることは当事者間に争のないところであるから、本件買収令書に記載された買収の時期がその後訴願裁決前である昭和二十三年七月二日に遡つて定められても違法でないことは勿論である。よつて控訴人の右主張は採用することができない。次に控訴人は、本件土地は控訴人主張の塩釜市都市計画に基き土地区画整理が施行される土地であるから自作農創設特別措置法第五条第一項第四号により買収することができない土地であると主張する。しかし同条項によると、都市計画法第十二条第一項の規定による土地区画整理を施行する土地の境域内にある農地は、都道府県知事の指定する区域内にあるものについてはこれを買収しない旨定めたものであつて、該指定がない限り買収の対象から除外されるものではないといわなければならない。しかるに本件土地が同条項の県知事の指定を受けたものでないことは控訴人の自認するところであるから、本件土地が都市計画による土地区画整理を施行する土地であるとしても右条項の買収の対象から除外さるべき土地に該当しないことはいうまでもない。よつてこの点の控訴人の主張も採用することができない。

以上により控訴人の主張は理由がなく原判決は結局相当であるから民事訴訟法第三百八十四条第九十五条第八十九条を適用して主文のとおり判決する。(昭和二六年三月九日仙台高等裁判所民事部)

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